マンションとは?
さて、「マンションとは何か?」と聞かれたら、皆さんはどう答えますか。
鉄筋コンクリートでできていて、3階建て以上の中高層住宅で、たくさんの住戸が縦横に集まって一つの建物となっているもの…そんなイメージでしょうか。
実は、「マンション」という用語は「適正化法」という法律で定義されていますが、一般的なイメージとはちょっと違っている部分もあります。法律の定義によると、1棟の建物が区分所有されており、2人以上区分所有者がいて、そのうち1戸でも住宅として使われていたら、木造でも1階建てでも2戸しかなくとも、「マンション」ということになります。
従って、法律でいう「マンション」は、いわゆる「分譲マンション」を指し、一人のオーナーが所有し、部屋を貸している「賃貸マンション」は定義から外れます。また、区分所有されていても、住宅としての使用がなければ、「マンション」ではないということになります。そして、「マンション」には、建物だけでなく、その敷地や、付属施設も含まれます。
これとよく似たものに「区分所有建物」という表現があります。「区分所有法」という法律で定義されていて、区分所有されていれば、商業ビル、オフィスビルでも、これに該当します。
マンションの基本を定めた法律が「区分所有法」
さて、名前が挙がった2つの法律はどのような法律でしょうか。まず「区分所有法」です。一つの建物が構造上区分されていて、それぞれ独立して使用できる場合は、そのそれぞれを別々の人が所有することができます。これを区分所有といいます。このような所有形態が出始めたのは、昭和30年代です。区分所有に関して権利関係を定めた法律がないと、将来大問題になるとして、昭和37年に制定された法律が「区分所有法」です。正式な名称は「建物の区分所有等に関する法律」といいます。
区分して所有するとひと口に言っても、そんなに単純ではありません。「お隣の住戸との間の壁は、どこまでがどちらのものなのか」「建物の構造部分はどう扱うのか」「共同で使う共用廊下やエレベーターなどの管理は誰が行うのか」「管理や共同生活のためのルールはどのように決めるのか」「ルールを守らない人がいたらどうするのか」、そういったマンションの権利関係や管理の方法の基本を定めたのが「区分所有法」です。
昭和58年、昭和63年、最近では平成14年12月にも改正され(施行は平成15年6月)、今も変わらずマンション管理のバイブルとされています。
区分所有法では、区分所有者全員で当然に構成されている区分所有者の団体(管理組合)が、マンション管理の主体であるとしています。マンションの区分所有者になったときから本人の意思に関係なく、全員が管理組合の一員となるわけです。
マンションを適正に管理していくために制定された「適正化法」
ところが、区分所有者とその団体である管理組合が管理の主体といっても、実際には、区分所有者の無関心や知識不足から、管理会社に任せきりだったり、必要な修繕がなされていないとう状況があり、対応が求められるようになりました。
こういった問題に「区分所有法」だけでは対処できないということで、平成13年に制定されたのが「適正化法」(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)です。
この法律では、マンションを適正に管理していくために、区分所有者や管理組合の責任を改めてはっきりさせ、国や地方自治体は管理組合を支援していくことになりました。また、管理組合にアドバイスするマンション管理の専門家として「マンション管理士」という国家資格をつくり、それまで法的規制がなかった管理会社には『登録』や、契約内容の説明を義務付けました。
マンション管理センターは、この法律で、管理組合を支援するための組織として設置がうたわれた「マンション管理適正化推進センター」の指定を受けて、さまざまな形で管理組合をサポートしています。同時に、マンション管理士の試験機関でもあり、「適正化法」とは縁の深い公益法人です。
マンション管理の対象は?
ところで、マンションの「管理」というと、どんなイメージを持ちますか。
まず、頭に浮かぶのは、エントランスや共用廊下の清掃、割れたガラスや照明器具の管球交換といったメンテナンス、そして管理員さんの窓口業務などでしょうか。
マンションは「専有部分」と「共用部分」からできています。区分所有法では、区分所有権の目的たる建物部分が「専有部分」、それ以外の部分が「共用部分」と定義しています。皆さんのそれぞれの住戸の玄関を入った中の空間(区分所有権が登記されている部分)と、そこにある建築部分が専有部分です。その他の柱や梁や床スラブといった建物の主要構造部や、共用廊下、集会室などみんなが共に使用する部分、エレベーターや給水ポンプ、各住戸までの給水管というような設備は、「共用部分」ということになります。管理組合の仕事は、この「共用部分」の管理です。「専有部分」は、基本的に、それぞれの区分所有者が管理することになります。
そして、適正化法の「マンション」の定義には、建物だけでなく、敷地や付属施設(機械式駐車場など敷地内にある建物以外の施設)も含みますので、管理組合が行うマンション管理の対象は、敷地、建物の共用部分、付属施設ということになります。しかし、1棟の建物内で共同生活を営む以上、専有部分についても、まったく関知しないというわけにはいきませんので、円滑な共同生活に必要な範囲においては、専有部分も対象に含むことになります。
マンション管理は管理組合が規約と総会を使って行う
マンションに関して「管理」といった場合、「広い意味の管理」と「狭い意味の管理」があります。「マンション管理」といった場合の「管理」は「広い意味の管理」に当たり、管理組合の仕事全部を指すといってよいでしょう。建物の維持管理はもちろん、管理組合の運営から、お金の管理、区分所有者間の生活上のルールづくりなど多岐にわたります。
一方、「狭い意味での管理」は、区分所有法18条に定められた「管理」を指し、この管理組合の行う共用部分の「管理」に関することは、原則、総会で決めることになっています。また、区分所有法では、少なくとも年1回は総会を開くこと、事務の報告をすることも義務付けられています。毎年、総会で、前期の事業や決算の報告を行い、今期に予定される清掃や点検、修繕工事などの事業計画を示し、管理に必要な費用について予算承認をもらうのは、このためです。また、区分所有法では、管理や生活のルールについては、区分所有法に違反しない範囲で、規約で定めてよいとされています。したがって、管理組合の組織や役員の規定、総会や理事会に関する規定、管理に必要なお金の負担や支出に関する規定など、実際に管理を行う上で必要な基本ルールは、規約に定められています。規約は、管理組合の憲法ともいえるものです。
このように「規約」と「総会」は、まさに、「マンション管理」のために管理組合を動かす車の両輪ということになります。