マンション防災探検(5) ガス供給設備

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様々な用途に使われるガス

ガス器具といえばまずガスコンロを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。調理器具の代表選手です。しかし、これだけではありません。給湯機、暖房器具をはじめ、最近では発電設備にも使われています。

電気とともに私たちの生活に欠かせないものとなっています。ガスを安全に使用し、災害時にも適切に対応するために、自宅のガス設備を「防災の目」で見直してみましょう。

ガスの供給系統

一般的なマンションでは、都市ガスの供給会社が敷設した配管から敷地内に引込み、各住戸に配管で分岐しています。

小規模なマンションや都市ガスが普及していないようなところでは、敷地内にガスボンベ置き場やバルクと呼ばれるタンクを設置し、これらから各住戸に供給する方式になります。

ガス配管が各住戸内に引き込まれる前に栓とガスメーターが設置されています。これらは玄関脇などにあるメーターボックス内に収納されていることが多く、普段目にすることはないかもしれません。

ガスの種類とガス器具の選定

燃料として使用されるガスは都市ガスとLPガスに大別されます。マンションの多くは、都市ガスの供給を受けていますが、前出のとおりガスボンベ置き場やタンクを設けているケースでは、LPガスが供給されていることになります。

都市ガスは、現在主流の13Aと呼ばれる規格のガス以外にも様々な種類が存在しています。ちなみに「13」とは単位体積当たりで発生する熱量を表す指標で、「A」とは燃焼速度を表す指標なのです。

つまり種類が違うガスは、発生熱量や燃焼速度が異なりますので、当然のことながら、使用するガス器具(特にバーナー部分)は、供給されているガスの種類に適合したものでなければなりません。

これは都市ガスとLPガスでも同様のことが言えます。転居のとき、これまで使用していたガス器具を継続使用する場合があるかもしれませんが、ガスの種類に適合いるかどうかしっかりと確認する必要があります。もし適合していない場合は、不完全燃焼を起こし、中毒事故や火災につながる場合があります。

ガスメーターの様々な機能

ガスメーターは、単にガスの使用量を計測するためだけのものではありません。マイコンメーターと呼ばれるように、安全のための様々な機能が備えられています。

代表的なものは自動遮断機能で、次のような状態をマイコンメーターが感知すると、メーター内の栓が自動で閉じ、ランプ点滅などで表示されます。

・メーターの大きさごとに定めた以上に多量のガスが流れた場合
・長時間、一定量のガスが所定の時間以上流れ続けた場合
・震度5強相当以上の地震を感知した場合
・流れるガスの圧力が所定の値を下回った場合(ガスの流れのある時のみ)
・警報器・不完全燃焼警報器が作動した場合(連動している場合のみ)

いずれもガス漏れなどの事故を未然に防止(または被害が少ないように)するための機能です。

異状時の対処

様々な安全措置が講じられているガス設備・器具ですが、それらにまかせっきりではいけません。異状時の正しい対処方法をマスターしておくことが重要です。

ガス漏れ発生時

主にガス漏れは次のようなケースで発生します。

・ガス管が破損し漏洩する。
・接続ホースが外れ漏洩する。
・ガス器具使用中に立ち消えし、未燃焼ガスが放出する。

こうした場合、前述のとおりマイコンメーターが作動し自動的にガスが遮断されるはずですが、まれに装置の作動不良を起こすこともあるので、機械にまかせっきりではいけません。

ガス臭いと感じたら、

①窓を開け換気をする。
②機器栓・ガス栓を閉める。
③メータガス栓(マイコンメーターのところにある栓)も閉める。
④ガス会社に連絡する。

こうした作業を行うとき、次の点に注意してください。

・都市ガスは空気より軽いので、天井付近に溜まったり、上の方に流れていったりする性質がある。(LPガスは空気より重い)
・ライターやマッチなどの「火気」を絶対に使わない。
・電灯、換気扇などのスイッチに触らない。(ON・OFFする際に、小さな火花が出て、引火の原因になる)
・ガス臭い場所が屋外の場合は、窓や戸を閉めガスが室内に入らないようにする。必要に応じて近所にも注意を呼びかける。
・ガス臭い所へは立ち入らない。

マイコンメーターの復帰方法

すばやく反応してガスの遮断をするのがマイコンメーターの役割ですから、場合によっては異状ではなくても作動したりすることがあります。 また、地震発生に伴い遮断機能が作動したときでも、被害が全くなく、ガスを早く使いたい場合もあります。

そこで、正しい復帰方法を覚えておくと便利です。標準的な復帰方法をご紹介します。

①すべてのガス器具を止める。
②復帰ボタンのキャップを外す。
③復帰ボタンをしっかり奥まで押し込み、ゆっくり手を離す。
※赤いランプが点灯した後、また点滅が始まる。
④ガスを使わないで3分待つ。
※点滅が消えていたら、ガスが使える
※消えないときは、もう一度①から。

注意していただきたいのは、ガス漏れが発生していないことと、すべてのガス器具の停止(ガス栓の閉鎖)を確認することです。こうしないと復帰と同時にガスが漏れてしまいますから。
メーターの機種によって若干操作方法が異なる部分がありますので、詳しくは、ガス供給会社のホームページやチラシなどを参照してください。

次回は情報設備について見ていきましょう。

執筆

永山 政広(ながやま まさひろ)
NPO法人ライフ・コンセプト100 アドバイザー

消防官として30年間にわたり災害現場での活動、火災原因調査などに携わり、2013年からNPO法人ライフ・コンセプト100のアドバイザーとして、セミナーや防災マニュアルづくりなど、マンション防災の第一線で活躍。