マンション防災探検(8) 警報設備
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自動火災報知設備
警報設備は、出火を知らせ、初期消火や通報、避難などの必要な行動を促すために設置されています。その代表的なものが自動火災報知設備です。「火災報知機」などの通称の方が聞きなれているかもしれません。
この設備は、感知器が火災を感知すると警報ベルや放送設備と連動して建物内にいる人に火災発生を知らせます。
感知器
感知器は、熱を感知するもの、煙を感知するもの、炎を感知するものの3種類がありますが、マンションに設けられている感知器は、ほとんどが前二者になるでしょう。
熱を感知するものは、さらに二種類に分かれます。差動式と定温式です。
差動式は室内の温度の上昇する割合を感知する構造になっており、急激に温度上昇すると火災と判断して信号を発するしくみになっています。定温式は文字通りあらかじめ設定された温度になると反応するしくみです。
煙を感知するものは、煙の粒子により光が乱反射する原理を用いたもので、感知器の内部に入った煙による反射光を受光部で検知し、信号を発するしくみになっています。

いずれの方式でも、センサーの感度を上げれば早く感知できるものの、火災以外の現象でも反応するようになってしまうので、様々な実験を繰り返し、ちょうどよい感度に設定されています。ですから、製品個体によっては、敏感すぎて誤報につながってしまう場合もあります。
発信機
火災を発見した人が押しボタンを押すことにより知らせる装置です。共用廊下などに設置されることが多いと思います。

屋内消火栓(2人以上で操作するタイプ)の起動ボタンを兼ねている場合もあります。この場合、ボタンを押すと上部についている赤色ランプが点滅状態になります。ポンプが起動したしるしです。
受信機
感知器や発信機が送出する信号を受信し、ベルを鳴動させたり放送設備で火災発生のアナウンスを放送したりする装置です。

マンションの場合、管理事務所や防災センターに設置される場合が多いでしょう。こうした部屋に常時人がいる場合は、あまり問題がないのですが、無人になったときに感知器が作動すると少々ややこしい問題が生じてしまいます。
無人であっても「自動火災報知設備」ですからベルの鳴動や放送は問題なく作動するはずで、そういう点では本来の機能を発揮しているわけですが、もし、誤報だった場合、どこの感知器が作動したかは、受信機の表示を見ないと判別がつかないのです。
つまり、火災でない場合の対処が問題になってくるのですが、無人状態になるようなマンションでは遠隔管理業務を警備会社等に委託している場合が多く、火災発報時の確認業務もこれに含まれているはずです。
受信機が火災信号を受信すると警備会社に転送され、職員が急行して管理事務所を解錠し受信機の表示を確認、必要に応じ合鍵で該当する部屋を解錠し目視確認するという流れになります。
しかし、急行するといっても緊急車両ではないので、ある程度の時間がかかります。報知器が作動した場合は、煙が見えなくてもすぐに誤報と決めつけず、居住者同士が協力して出火場所の確認や情報交換などを行うようにしましょう。
どこへ報知するのか
「自動火災報知設備」という言葉が誤解を生んでいる場合もあります。「自動で消防署へ報知される」という誤解です。
この装置が報知する相手は、「建物内にいる人」なのです。ですから、火災発生を知った人が119番通報をしなければならないんです。
前述の遠隔管理業務を委託している場合でも、警備会社の職員は、現地へ行って火災を確認するまでは、119番通報を行いません。その場にいる人が速やかに通報するよう、居住者全員で共通認識を持っておきましょう。
通報のポイントは、マンション防災対策室の「地震・火災から身を守る(7)119番通報と避難」(2015年03月26日配信)で詳しく説明しています。参考にしてください。
次回は避難設備について見ていきましょう。

執筆
永山 政広(ながやま まさひろ)
NPO法人ライフ・コンセプト100 アドバイザー
消防官として30年間にわたり災害現場での活動、火災原因調査などに携わり、2013年からNPO法人ライフ・コンセプト100のアドバイザーとして、セミナーや防災マニュアルづくりなど、マンション防災の第一線で活躍。