マンション防災探検(9) 避難設備
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危険なところから脱出するために
避難設備は、火災が発生した時に危険なところにいる人々を安全な場所へ脱出させるために設けられています。
避難を直接助ける道具である避難器具と安全なところへ導くための誘導灯・誘導標識に分類されます。
これらのほか、消防法の規定ではなく、建築基準法に基づいて設置される避難施設も広義の避難設備といえるでしょう。
避難器具
主に高所から脱出するために設けられています。代表的なものが避難はしごでしょう。

この器具は、マンションの場合、ほとんどがバルコニーに設置されているはずです。床面に穴があけられ、そこからはしごが下階に垂らされ下りられるようになっています。普段は、はしごが折りたたまれ、穴は蓋でおおわれているので、別名「避難ハッチ」とも呼ばれています。
非常時は蓋を開け、はしごを垂らしますが、具体的な操作方法が蓋に書かれています。いざというとき慌てないために普段から操作方法を確認しておくべきなのですが、避難はしごは、すべての住戸にあるわけではありません。バルコニーの端の位置に設けられる場合が多く、設けられていない住戸では簡単に確認することができません。
ですから防災訓練等の機会を利用して全居住者に周知する必要があるのではないでしょうか。
誘導灯・誘導標識
いわゆる非常口の案内です。看板式になっているものが誘導標識で、発光し暗い状況でも分かるようにしたものが誘導灯になります。
これらは、設置される場所と機能により避難口誘導灯(標識)と通路誘導灯(標識)の2種類に分かれます。

避難口誘導灯(標識)
脱出可能な出口(避難口)の直近に設置されるのが避難口誘導灯(標識)です。緑地に白色の絵文字でシンボルマークが描かれています。
なお、避難口とは、必ずしも避難経路のゴール地点ではありません。防火区画で区切られている場合は、その区画の出口が避難口になるからです。
タワーマンションの場合、階段室が防火区画として区切られる場合が多く、階段室へ抜けるための目印になります。

通路誘導灯(標識)
避難口へ通じる通路に設けられ、避難口の方向を案内する役割を担っています。避難口誘導灯(標識)とは対照的に白地で緑色の絵文字でシンボルマークと避難口の方向を示した矢印が描かれています。
小規模な区画内の場合や避難口が容易に見渡せるような状況では、通路誘導灯(標識)が省略される場合もあります。
建築基準法に基づく避難施設
代表的なものが避難階段とバルコニーです。
火災時はエレベーターによる避難は極めて危険であり、垂直方向の避難は階段が主体になります。エレベーターと階段の関係については、マンション防災対策室の「マンション防災探検(2)エレベーターと階段」(2015年08月13日配信)で詳しく説明しています。参考にしてください。
バルコニーについては、避難はしごによる垂直避難の拠点となる重要なところです。しかし、前述のとおりすべての住戸にはしごが設けられているわけではありませんから、非常時は、はしごのところまで水平移動しなければなりません。
そこで、各住戸間の仕切りである「隔て板」は、一部が容易に破壊できるような構造になっているのです。
思いっきり蹴ると破壊できるようになっているのですが、板自体が弾力性を有しているので慣れていないと跳ね返されてしまい、なかなかうまくいかない場合があります。無理して蹴るのではなく、イスの脚の先端部分などで突くようにすると、力のない人でも破壊が可能です。
そうはいっても、実際はなかなかうまくいかないもの。隔て板と同じ材質の板がホームセンターなどで購入できますので、防災訓練で体験するような企画を考えてみてはいかがでしょうか。


執筆
永山 政広(ながやま まさひろ)
NPO法人ライフ・コンセプト100 アドバイザー
消防官として30年間にわたり災害現場での活動、火災原因調査などに携わり、2013年からNPO法人ライフ・コンセプト100のアドバイザーとして、セミナーや防災マニュアルづくりなど、マンション防災の第一線で活躍。